そのヒットぶりがたびたび話題にのぼる乃木坂46・白石麻衣の写真集「パスポート」(講談社)が、今月に入り31度目の重版で累計発行部数50万部を突破したことが報じられた。17年2月に初版10万部で発売以来、3年を超えるロングセラー。白石本人の魅力とネットを活用したPRなどがヒットの原動力といわれるが、今後のアイドル写真集など類似ジャンルの販売戦略のモデルケースとなるか?
白石のナチュラル感が若い女性たちの憧れに
「パスポート」は白石にとって2冊目となるソロ写真集で、発売前年の秋、サンディエゴやロサンゼルスなどアメリカのウエストコーストで4日間かけたロケを敢行。撮影は中村和孝氏で、ロンドンから1993年に帰国後、雑誌や写真集、広告等多方面で活躍しているフォトグラファーだ。芸能人の写真も数多く手がけ、同じ乃木坂46の生田絵梨花やAKB48元メンバー・小嶋陽菜の写真集などもヒットに導いている。「パスポート」は女性ファンにも手にとってもらえる“おしゃれでセクシー”というコンセプトで撮られ、そこに白石の清潔なキャラクターがフィットした。
「白石さんに限ったことではないんですけど、写真集を見るとき、たとえばマニキュアなんかにも目がいっちゃうんですよ」と、鑑賞時の着眼点について話すのはアイドルファンでアパレル販売員の20代女性。
「実際どうかはともかく、ああこれはたぶん撮影のためにその日に塗ったんじゃなくて何日も前に塗ってるんじゃないかな、なんてナチュラル感があったりすると嬉しいんですよね。なぜかっていうと、うちのお店にくるお客様なんかもそうですが、女子は究極の美を日々追っているところがあるんですよ。まさに白石さんの写真集は、そういう目線でみてもわざとらしさがなくて、本当は遠い存在かもしれないんだけど近しい感があるというか、好感が持てるんです。憧れとして自分を鼓舞するアイコンにぴったりなんだと思います」(前出・アパレル販売員)
乃木坂ブランドと出版社の販売戦略の強さ
乃木坂のブランディングの強さを指摘する声もある。
「グループ自体、比較的クリーンなイメージが強いグループだと思いますし、男性ファンに媚びていない感もある。娘を持つお父さん世代も『乃木坂なら握手会とかイベント行ってもいいよ』って安心して言える雰囲気があるんですよね。そんな中でも白石さんはこれまでスキャンダルがゼロ、アイドルとしてのプロ意識の高さは男性女性問わず好感度の高さを支える要因の一つでしょう。写真集のヒットもそうした土台のうえにあるんだと思います」と、純・芸能的な分析をするのはスポーツ紙の50代男性記者。
写真集や書籍の営業に携わる出版社の40代男性スタッフは、「パスポート」の販売戦略について話す。
「講談社さんの戦略がすごいと思います。白石さんの写真集の第1弾は別の出版社から出ましたが、第2弾の『パスポート』は講談社さんから出て前作以上に爆発的に売れました。生田さんも第2弾が講談社さんから出て第1弾以上のヒットを記録しているんです。撮影した中村和孝さんをはじめ、スタイリストやヘアメイクも女性ファッション誌で活躍するスタッフを集めたと聞きます」
そんなプロデュース面に加え、ネット時代にフィットした展開が効果を発揮した。
「SNSなどネットを積極的に活用するのは今、芸能界の常識になりつつありますが、『パスポート』は大胆にもWeb上で写真集の3分の1に相当するほどの点数の写真を公開するという戦略をとったんです。出し惜しみしないどころか、どんどん露出させて、写真集を買ってもらう。これは写真集自体の出来によほど自信がないと、とれない戦略ですよ」(前出・出版社スタッフ)
ネット展開で構築された好循環の“仕組み”
また、こんな声もある。
「今年1月に今月25日発売のシングルをもっての卒業を発表した白石さんですが、そういったニュースが出るたび、Webの関連リンクに写真集関連の過去の記事などが並ぶわけです。先月は卒業記念で『パスポート』の限定カバー版が発表されましたが、再びそこで写真集への注目度もアップする。写真集自体が売れているというニュースがさらに売上に結びつく。そのうえ、手軽に写真集を入手できるアマゾンなどネットの流通も加わる。『パスポート』効果で、篠山紀信さん撮影で2014年に発売されたファースト写真集も再評価されて、アマゾンに新規レビューがつくんです。そんな、いい意味での好循環の“仕組み”が出来上がっているといえるでしょう」と分析するのは、情報系メディアの30代男性編集者。
タレント本人の魅力、プロデュース面でのねらい、SNSなどを活用したネットでの大胆なPRなどいくつもの要素が「パスポート」のロングヒットを後押ししている。完成度の高い商品をネットで効果的にPRした「パスポート」は大きな成功例として、これからの写真集の目標となりそうだ。