2ステップ勉強法は、
あらゆることに応用できる考え方であり、
勉強方法です。
何かをなそうというとき、
一直線に目的のことに飛び込む方法も、
もちろん有効です。
それはサッカーでいえば、
遠い間合いから
ゴールにシュートするようなものです。
しかし、それはかなりハイレベルです。
でも、いったんベストポジションにいる仲間にパスして、
よりゴールに近い場所からシュートをねらったほうが、
ゴールに入りやすいのではないでしょうか。
つまり2ステップです。
ボクシングでいえば、
お互いに構えた場所から、
いきなり飛び込んでワンパンチで相手を倒そうとするのは、
よっぽどのスピードとタイミングがないと難しいといえます。
「ワン」で、前の手でジャブを放ちながら間合いを詰め、
「ツー」で近い間合いから渾身の一撃を叩き込むほうが、
相手に届きやすいといえます。
異性に対しても、
出会っていきなり「つきあってください!」では引かれますが、
まずは友達からはじめて、距離を近くし、親交を深める。
これがワンステップ。
そのポジションから時期をみて、
本心を表明し、
さらに相手に接近していく。
これがツーステップ。
受験勉強においても、
いきなりワンステップで飛び込んでいないでしょうか。
それが悪いというのではありません。
しかし、それは心身ともに、
かなりガチガチに緊張している状態だと思います。
そうなると集中力や思考力が減退し、
学習の質が落ちることが予想されます。
勉強にも
2ステップの考え方を取り入れてみましょう。
勉強というと、
いきなり「本気モード」で受験参考書を全力で読んだり、
過去問に全力で取り組んだりします。
しかし、それでは、
見えるものも見えなくなり、
簡単にわかるものも難しく捉えがちになります。
試験勉強に対する向き合い方として、
自分のなかで
「2つのモード」を使い分けてみてはいかがでしょうか。
リラックスモードと真剣モードです。
真剣モードにかんしては普段、
みなさんは、
すでに実践されていると思います。
ですから、それはそのまま続けて、
リラックスモードを取り入れてみましょう。
たとえば教科書を
ぱらぱらとめくって眺める時間を設けてみたり、
いきなりランダムに開いたところを、
「遊び心で」適当に読んでみる。
英語の単語帳でも、
最初から律儀にやる方法と並行して、
リラックスモードとして、
ランダムに開いて遊んでみましょう。
教科書や基本のテキストを、
律儀に1ページ目から読むことは
体系的に学ぶためには大切なことです。
しかし、その勉強の仕方では、
最後のほうを読むのは、
かなり先のことになってしまいます。
しかしリラックスモードを発動させれば、
いきなり最後のほうに
「ワープ」して読むことができるのです。
リラックスモードですから、
何も真剣に読む必要はありません。
「へー、そういう知識をこれから学ぶのか。
楽しみだな~」程度に、
楽な気持ちを持つことがポイントです。
間違えないでいただきたいのは、
2ステップ勉強法とは、
「リラックスモード→真剣モード」と、
段階的に進めるということではなく、
2つのモードを同時進行で使い分けるといった意味になります。
中学受験や高校受験、
あるいは大学センター試験では
英語を勉強すると思います。
そのさい、
膨大な英単語を覚えるという壁に直面します。
多くの人がとる受験対策は、
英単語帳を買ってきて、
アルファベットのAから順を追って、
学んでいくという方法ではないでしょうか。
しかし、この勉強法では最後のほうになってくると、
最初のほうに記憶したことを忘れてきたりします。
そこで2ステップ勉強法の登場です。
英単語帳を最初から律儀に進めていくと同時に、
リラックスモードを発動させるのです。
つまり、そのときの気分でぺらぺらめくり、
目にとまった単語を読んでみる。
「へー、そんな単語があるんだ」という印象が残れば、
あとから目にしたときに、
「ああ、見たことある」となり、
暗記しやすくなります。
その意味では、英単語帳は、
記憶と音読を分離させるとよいかもしれません。
単語を1回ずつ読んだとしても、
早ければ1時間以内に終わるのではないでしょうか。
毎日のように1回ずつでも発音していると、
「ああ、見たことある単語だな」となって、
あとから覚えるときに、
一気に脳内に定着する可能性があります。
ワンステップで
英単語を暗記しようと緊張していると、
このような考えはでてきません。
「よし!覚えるぞ!」と
緊張して覚えることにも意味がありますが、
リラックスして英単語帳に接する部分も持つ。
こうすることで新たな発見がありますし、
あとから記憶しやすくなるというメリットがあります。
考えてみれば受験勉強自体が、
じつは2ステップになっています。
いきなり試験当日に受験しようとするのは、
ワンステップ。
誰も、
そんな無謀なことをする人はいないでしょう。
そこで受験対策のための勉強という「ワンクッション」を入れ、
「ツーステップ」にするわけです。
これは武道や格闘技、
スポーツでもいっしょです。
稽古や練習、
トレーニングはワンステップ。
試合はツーステップです。
その意味では、
このページで述べたことは、
2ステップのなかの、
さらに2ステップということになりますね。
あとがき
2ステップの考え方は、
人体や商売にも言えます。
人体では尿を、
まずは膀胱にため、
ある程度たまったら尿意が出てきてトイレにいきます。
500mlためることができるので、
しょっちゅうトイレに行く必要がないわけです。
つまり2ステップです。
これがもし、
尿が作られて直通で排尿しなければならないとしたら、
生活の質はかなり低下してしまうことでしょう。
これは胃にもいえますね。
ある程度ためておいて、
徐々に十二指腸のほうへ送り出します。
こういったことから、
なにかを処分する場合でも、
まずは「受け皿」を作っておく。
そして、ある程度、
たまってきてから捨てるという考えもできます。
そうすれば捨てるために
時間を取られないからです。
食べ物も、
まずは噛み砕いてから食道に通し、
胃に送り込みます。
口に入れて、
いきなり胃には届きません。
そんなことをしたら、
胃がびっくりしてしまいますよね。
そこで、まずは口の中で
一拍おくわけです。
つまり、胃に届けるまでに
咀嚼というワンクッションをはさみます。
ダイエットしたいとか、
カロリーを摂りすぎたくない人は、
かむ段階に時間をかければ、
それだけ、より慎重に胃に送り込むことができます。
肝臓の働きもそうです。
小腸壁から吸収した栄養素は、
いきなり血液中から
全身の組織に送られるわけではありません
(一部の脂肪は直接送られますが・・・)。
まずは門脈から肝臓に行き、
そこで必要な形に作り替えられるわけです。
つまりワンクッション入っています。
この2ステップのしくみによって、
必要な栄養素を必要な時に、
必要なだけ送り届けることができるのです。
耳も、まずは鼓膜を振動させ、
音をとらえます。
これが第一段階。
そのつぎに
中耳にあるツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨というテコの原理によって、
音を増幅するようになっています。
つまり2ステップです。
免疫系もそうです。
まずは皮膚が、
外敵を体内に侵入させないようになっています。
もしも、その第一段階を突破された場合、
白血球が働きます。
白血球は、
2ステップ目の免疫機構なのです。
記憶のしくみも、
ツーステップになっています。
外界から入ってくる情報を、
何でもかんでもすべて長期記憶庫に保管していたのでは、
脳がすぐにパンクしてしまいます。
そこで、まずは
海馬というフィルターに1か月ほど蓄える。
そのあいだに、
本当に重要なものとそうでないものとを振り分け、
吟味するわけです。
この2ステップのしくみによって、
本当に必要な記憶だけを
側頭葉などに保管できるような仕組みになっているのです。
医療の現場においても、
まずは患者さんに問診を行い、
問題を洗い出します。
これがワンステップ。
それによって病気を確定し、
狙いを定めて薬を出したり、
場合によっては手術などの治療をするわけです。
これがツーステップ。
患者さんが、
胃が痛いんですというからといって、
いきなり胃薬は出しません。
しっかりと確定診断をしてから、
医師が判断して、
どう治療するか決めるわけです。
そのほかビジネスでも
2ステップの考え方ができます。
いきなり消費者に売りつけようというスタイルは、
「押し売り」になり、
引かれるだけです。
しかし、まずは消費者の求めるものを
無料で提供する。
まずは消費者に何かを与える。
これがワンステップ。
その土壌のうえに、
本当に売りたいものを差し出すわけです。
これで2ステップ。
何か大きな買い物をするときでも、
その場で買わずに、
1日おいてからまた来る。
つまりツーステップです。
時間を置くことによって、
衝動買いを防ぐことができるわけです。
受験勉強においては、
基本を身に着けてから
応用に進むということも2ステップです。
また、まずは
概要を理解することがワンステップ。
その上にたって、
詳細を理解していくことがツーステップ。
このように見ていくと、
いろいろなところで
2ステップの考えがあることがわかりますね。
最後になりますが、
じつはこの「あとがき」も
2ステップの原理にのっとっています。
本文はワンステップ。
あとがきはツーステップ。
本文では、
本当に言いたいことを述べ、
あとがきには補足的な内容を書くわけです。
もしこれをごちゃまぜにしたら、
本当に言いたいことがぼやけて
伝わらなくなってしまいます。
以上の2ステップの考え方は、
ノートの取り方、
試験時間の配分などにも応用できます。