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糖尿病と血管のふか~い関係とは!?

糖尿病は血管病!?

「人は血管とともに老いる」と提言したのは、
近代医学の礎を築いたウィリアム・オスラー博士でした。

それから1世紀半。

ようやく最近、血管の健康について語られるようになりました。

ところで我らを悩ます糖尿も、
別名「血管病」と呼ばれているのをご存知ですか?

そう、実は、糖尿病と血管は、
切っても切れない深い間柄なのです。

となれば俄然、知らずにはいられませんよね。
知っているようで知らない、糖尿病と血管の深い関係。

今回もしっかり掘り下げていきますので、
どうぞ最後までお付き合いください。

■血管の構造

全身に張り巡らされた血管の長さ。
どれくらいだと思いますか?

仮に全身の血管をすべてつなげて一本にしたとすると、
約9万kmという途方もない長さになります。

心臓から送られた血液が足の指に届くまでに、
ゆうに地球二周分の旅をしなくてはいけないのです。

では、血液が地球二周分の距離を進むのにかかる時間は
どれくらいだと思いますか?

答えは、なんと1分!

血液はどんなロケットよりも早いのです。
超スピードの血流は、
いわば荒れ狂う濁流のようなもの。

例えば誤って頸動脈をナイフで刺してしまった場合、
天井に届くほどのの血潮が首から噴き出すと言われています。

血管の中には途方もない圧力が封じ込められているのが、
お分かりいただけると思います

そのため血管のカベは、
ちょっとやそっとのことでは破れないように出来ています。

「内膜」「中膜」「外膜」の膜を3層重ねて柔軟性と弾力を持たせ、
血液の圧力を上手に包み込んでいるのです。

よく、若さとは柔軟性があることだといいますが、
血管も全く同じこと。血管年齢が若いほど、
血管の壁はイキイキとした弾力と柔軟性に富んでいるんだそうです。

■糖尿病は血管

では、糖尿病と血管にはどんな関係があるのでしょうか。

糖尿になると過剰な糖分が、血液や尿に溶け出しますよね。
よく、「糖尿病患者の尿は甘い」と言いますが、
これは比喩でも冗談でもなく本当に甘いそうです。

血液にも糖が増えると、
水に砂糖を混ぜた砂糖水のようにドロドロベタベタとしてきます。

当然、砂糖水状態の血液は流れにくくなり、
血管の壁にもべっとり張り付きます。

すると血管壁のコラーゲンと結びつき、
AGEという物質に変化してしまいます。

AGEとは日本語で、終末糖化産物といいます。

難しい言い回しですが要は、
「糖の最終的な姿」と考えてもらえればOKです。

AGEに変化すると、
今度は砂糖水を固まらせたかのように、
ガリガリに固くなって取れなくなってしまいます。
水あめみたいなものですね。

つまり・・・
 
糖尿になる

血液中に糖が増える

AGEが生まれる

血管の弾力が失われる

どんどん血管が損傷していく

という構図です。

糖尿病が別名血管病といわれる理由が分かっていただけるでしょうか。

こうやって血管は弱っていく!

もちろん糖尿でない人も、
いろんな理由で血管が弱っていきます。

「反応障害仮説」というのですが、
これは簡単に言うと、「血管は傷つけられるたび弱っていく」という説です。

「そんなの、当たり前だろー」という声が聞こえてきそうですが、
いえいえ当たり前ではないんです。たとえば、筋肉。

トレーニングなどで負荷を加えるたび、
強く太く育っていきますよね。

あれは筋繊維を傷つけることで成長していっているんです。

しかし、血管に限ってはそうではないのです。
ダメージを受ければ受けるほど健康が失われていく。

そう、加点法ではなく減点法なんですね。
だから血管を守るには、
最初持っていた10点をなるべくなくさないようにするしかないんです。

血管は傷つければ傷つけるだけ弱っていくんです。

では、どんなダメージがあるのか見ていきましょう。

1.加齢

悲しいかな、加齢は、
われわれの体から弾力性や柔軟性を奪っていきます。

コラーゲンやエラスチンが失われて肌に張りがなくなるように、
血管のカベもまた徐々に弾力を失い固くなります。

はやい方で20代から血管は老化し始めるそうですよ。
「お肌の曲がり角」ならぬ、「血管の曲がり角」なのです。

ちなみに、糖尿の人の血管年齢は、
通常の年齢プラス10-20歳と言われています。

加齢に糖尿という要因が加わると、
一気に血管が弱っていくのです。

2.高血圧

血圧とは、血液の圧力のことです。

そのため高血圧になると、
血管のカベに常に負担がかかっている状態になります。

高血圧が続けば続くほど、
カベはもろくなってしまうのです。

ちなみに糖尿病の人は、
40~60パーセントが高血圧持ちと言われており、
これは糖尿病でない人の2倍です。

なぜ糖尿が高血圧を招くのかというと、
血糖値が高いと体内の細胞の浸透圧が高くなるからです。

そのため細胞や腎臓からの水分が血液中に流れ込み、
血液量が増して血圧が上昇してしまうのです。

3.高脂血症(コレステロール

高脂血症は単独ではあまり害はありません。

しかしひとたび糖尿病や高血圧等と併発すると大変。

糖尿によるインスリンが不足が中性脂肪の増加を招くので、
血管が硬くなり動脈硬化が一気に進んでしまうのです。

4.内臓脂肪

これまでは肥満が、
糖尿や動脈硬化を高めると考えられてきましたが、
肥満の中でも特に内臓脂肪がリスクファクターであることが分かってきました。

内臓に脂肪がつくと、
糖尿病や動脈硬化を誘発する物質が分泌されてしまいます。

太っているからではなく、
内臓脂肪が付いているから血管が痛んでしまうのです。

ちなみに内臓脂肪とは、いわゆる太鼓腹のこと。

腹がでているにもかかわらず、
つまんでも脂肪がつまめないという人は、
内臓脂肪型肥満の可能性が高いですよ。

今回のまとめ

ひとたび糖尿病になると、
ただでさえAGEによって血管が痛めつけられると言うのに、
さらに高血圧や高脂血症、
内臓脂肪が集まってきて、よってたかって血管を傷つけようとするのが
お分かりいただけたかと思います。

この連鎖を断ち切ることが、3大合併症に打ち勝つ大切な秘訣です。

・健康な血管は、弾力性と柔軟性に富んでいる
・高血糖になるとAGEという成分がうまれ、血管を痛める
・加齢、高血圧、高脂血症、内臓脂肪は単独でも血管を弱らせるリスクファクターだが、

糖尿になると全て併発しやすくなる

急激な血管の弱体化Tさんの場合

 

糖尿だと血管が弱っていく、という実例を患者さんの声として、
ご紹介したいと思います。

Tさん:うちは親父が糖尿だったんです。

でもすごく元気な人で、
持病があるって言うと人に驚かれるくらいでした。

そのせいでしょうね。
糖尿は大変な病気っていうイメージがなかったです。

それよりガンのほうが怖いと思ってたくらいでした。

だから自分が50歳を前にして、
糖尿になったときも危機感はほとんどなかったんです。

「薬を飲んで、食べ物を気をつけたらいいんだろう。知ってるよ」ってくらいで。

ところがふたを開けてみてびっくり、
親父とは全く違ったんです。

喉も渇くし体もふらふらする。

何をやっても疲れてしまって。
すぐにインスリンの自己注射が導入されました。

親父と同じ先生に診てもらってたんですが、
食事制限は親父のよりずっと厳しく言い渡されました。

そうこうしていると、
ものが見えにくくなりました。

老眼の始まりかと思っていたら、
糖尿病網膜症だと言われて。

無知でしたので、
何で糖尿なのに目が悪くなるんだと思いましたよ。

ほうっておいたら失明の危険性があるといわれて愕然としました。
しかも同時期に尿たんぱくもでてしまって。

知らぬ間に非代償性腎不全に進行していたと言うんです。

三大合併症のことはなんとなく知っていましたが、
まさかこんなに早く来るとは。

坂道を転げ落ちるように一気に悪くなっていくので、
恐ろしさに戦慄しました。

診断から3年半で透析一歩手前まで行ったんですよ。
これこそが糖尿の恐怖なんだと。

医者が言うには、僕は元々内臓脂肪が多くで高血圧、
高脂血症があったために、
普通の糖尿の人の何倍ものスピードで血管がやられていったんだそうです。

元々痛めつけられてた血管に、
高血糖状態が続いたため一気に血管が壊れて言って、
次々と合併症が出てきたんでしょう。

確かに親父は痩せ型で血圧も高くない。

僕と違ってもともと血管が健康だったから持ちこたえられたのでしょうね。

Tさんは現在、透析は免れたものの、
網膜の状態は深刻で光凝固術を受けることになったそうです。

Tさんの言うように、もともと高血圧や高脂血症、
内臓肥満で血管が弱っている方が糖尿病を患うと、
一気に症状が進行してしまいます。

そうならないために、糖尿の治療はもちろんのこと、
日ごろから血管の状態を把握して大事にしていきたいですね。

血管を守るためには

血管を守るためには、
現在の血管の状態を調べることから始まります。

血管の状態を調べるには、
こんな方法があります。

1.頚動脈エコー→血管の壁の厚さを調べ

簡単に血管の壁の厚さを調べることが出来る検査です。

血管壁の厚さをIMCといいます。

IMCの厚さは通常1mm未満で、
それ以上になるとと動脈硬化が疑われます。

首の皮膚の上から超音波を当てるだけで、
痛みや被曝がない検査なので安心して受けられます。

2.FMD→血管の弾力性を調べる

FMDとは血管の弾力性のことです。

FMD値が大きいほど柔軟でいきいきした血管、
小さいほど傷んだ硬くなった血管ということになります。

検査は20分ほどで、
すぐに結果がわかるのでうれしいですね。

腕に血圧計のようなものを巻きますが
こちらも痛みの心配はありません。

3.CAVI→血管の硬さ、詰まりを調べる

血管の柔軟性をCAVIといいます。

寝た状態で両腕・両足首の血圧と脈波を測定します。

動脈硬化が進んでいるほど数値は高くなり、
9.0を超えると危険信号といわれています。

時間は5分程度で、
こちらも血圧測定感覚でできる簡単な検査です。

これらの検査を組み合わせることで、
現在の血管の状態を正しく評価することが出来ます。

血管年齢や予想寿命までもわかるそうですよ。
自分の予想寿命・・・怖いけどちょっと調べてみたいですよね。

では、血管にこれ以上ダメージを与えないようにするにはどうしたらいいでしょうか。
いつもの食事の中で簡単に出来ることを3つ取り上げてみました。

・オメガ3の多い食事を心がける

オメガ3脂肪酸とは、
血液中の脂質濃度を下げてくれる健康的な脂質です。

なんと、コレステロール、中性脂肪を下げるだけではなく、
高血圧と高脂血症まで予防効果があります。

それだけではありません。

網膜の黄斑変性にも効果があるのです。
糖尿で悩まされている方にとってはまさに理想的な栄養素ですね。

オメガ3脂肪酸は、青魚、えごま油、亜麻仁油、
くるみ、緑黄色野菜などに含まれています。

普段使用している油をえごま油に変えれば、
毎日少しずつ摂取することができますね。

えごま油はクセがなく使いやすいですが、
熱に弱いので加熱調理には向きません。

カルパッチョにしたり、
ドレッシングとしてサラダなどにかけたりするのがお勧めです。

また酸化しやすい性質があるので、
保管時は出来るだけ密閉して酸素に触れさせないようにしておきましょう。

・葉酸を積極的に摂る

最近の研究によると、
葉酸が不足するとホモシステインが増加するのだです。

ホモシステインはコレステロールと並んで、
動脈硬化を促進させる最近注目の物質です。

葉酸はレバーや焼き海苔などに特に多く含まれています。
また枝豆や納豆にも含まれているので、
積極的に豆類を摂るようにしましょう。

・塩分の摂り過ぎに気をつける

糖尿になるとついつい糖質制限ばかりに目が行きますが、
高血圧の予防も大切です。気をつけたいのが、塩分摂取。

ラーメンのスープを飲み干すなんてもってのほかですよ。

また、しょうゆや塩は食品に直接かけず、
小皿にとってつけることで味が感じやすくなり、
使用量を減らすことができるので、おすすめです。

日常生活で少し気をつけるだけで一日2-3グラムの塩分を減らせるそうですよ。
知らないうちにとってしまっている塩分ありませんか?

いかがでしたか?
血管と糖尿のこわ~い関係。お分かりいただけたでしょうか。

しかし案ずることなかれ、
なんと血管年齢は巻き戻すことが出来るのだそうです。

今からでも十分間に合います。
ゆでたてのマカロニのような柔らかくぷりぷりな血管を手に入れましょう!

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