人を説得させるには、
物事のメリットやデメリット、
自分の考え方や気持ちを伝えて
相手の理解を得る必要があります。
どこかで共感できるポイントを作らないと、
相手に「ウン」と言わせることはできないのです。
「自分にとって有利」で
「相手にとって不利」な条件で説得を試みても、
相手はなかなか「ウン」とは
言ってくれないでしょう。
自己中心的で相手を思いやらない考え方に、
共感できるポイントは見つかりません。
理不尽な要求が通せるのは、
上司と部下、先輩と後輩のように
力関係がハッキリしているときだけです。
対等な関係ならば不可能です。
たとえば手元にある10万円を
二人で山分けするとします。
このとき自分の取り分を7万円、
相手の取り分を3万円にしたい場合、
どんな説得方法があるでしょうか?
心理学者が実験によって
ベストな方法を明らかにしています。
実験のために
初対面同士のペアを100組作りました。
ペアの片一方の人に10万円を手渡し、
自分7万円、相手3万円で
山分けしてもらいます。
その際、特定の言葉で
相手を説得するようにお願いします。
以下のような説明をどれかひとつ言ってもらいます。
相手にお金を渡す際に伝えるセリフ 1
「私が好きに分けて良いと言われたので、私が7万円で、あなたが3万円ね」
相手にお金を渡す際に伝えるセリフ 2
「私の方が年上なので7万円、あなたは3万円ね」
相手にお金を渡す際に伝えるセリフ 3
「私は女性なので7万円、男性のあなたは3万円よ」
相手にお金を渡す際に伝えるセリフ 4
「はいどうぞ(とくに何も説明しない)」
実験の結果、
多くのペアで反論が起きました。
納得できない説明ばかりなので当然です。
不公平な要求は普通、
受け入れられません。
しかし反論が圧倒的に少なく、
相手に受け入れられる説得方法がひとつだけありました。
それは、説明をしない場合(「はい」とだけ言って手渡した場合)でした。
実験を行った心理学者によると
「理不尽な要求はどんなに説明しても、
覆ることはありません。
理不尽なことは言葉で説得しようとしてもムダです。
あえて説明しなければ、
相手は深く考えずそのまま受け入れてしまうことが
たびたび起こるのです」と説明しています。
たしかに説明されなければ
疑問に思わないこともあるように感じます。
たとえば、現在でも毎日のように
死刑を執行している国があります。
私はそれが正しいこととは思いませんが、
その国の人はおかしいことだと思っていないでしょう。
なぜなら正しいか
おかしいかを議論することさえしていないからです。
説明がないから当たり前のように受け入れるのです。
もし相手に理不尽な要求をしなければならないなら、
理解を得ようなどと考えないほうがいいでしょう。
有無を言わさず当たり前の顔をしてやるほうが、
結果的に「そういうもんなんだぁ」と納得してもらえます。
相手にしっかりと説明することは
とても大事なことです。
そうすることで
信頼関係は築かれます。
しかしどうしても理不尽な要求を呑んでもらいたいなら、
説明しないことも、
相手の理解を得る方法のひとつなのです。